小説置き場(宏成:名古屋)

『ヲタクに恋は難しい』宏嵩×成海 激推し小説書いてます

これが嫉妬だと思い知った

※R18作品のため、ワンクッション



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「今日行ってもいい?」

昼休みにそう言ってきた成海に、宏嵩は違和感を覚えた。前にもこんなことがあった、理由は(俺にしたら)大したことじゃなかったあのとき。
午前中は何かと忙しくて、それでも一緒に昼食を食べられたのはよかったし、昼食を食べながらの成海は昨日読み返したBL本の感想だったり、その派生から諸々…とにかく平常運転だったんだが。昼休みの時間が終わりに差し掛かったとき、成海がそう切り出した。
今日は花金に明日の土曜日は休み。俺も誘おうと思っていた。しかも、是非とも泊まって行ってほしいという、下心がある。あの日、成海とはじめて重なった日から、2週間ほど経っていた。仕事終わりのメイトやゲーセン、樺倉さんと小柳さん含めて居酒屋は行っていたが、所謂ふたりゆっくりができていなかった。なので、下心丸出しになってしまっても、成海とゆっくりイチャつきたいと思っていたところに、突然のお誘いだ。

忙しかった午前中とは言え、残業になることも休日出勤になることもなさそう。…まあ、成海なら残業くらいはありそうだが、それはどうにか頑張ってもらおう。

「俺も誘おうと思ってた。」

素直につい口元は緩んでしまった。が、成海の表情はなんだか浮かない。なに、それはどういう反応?

「どうした、成海どん。なんかあった?」

少し冗談混じりに、できるだけ軽く、聞いてみた。

「な、なんにもないよ!うん、なんでもない!」

露骨に慌てている成海。成海は普段ステルス機能を駆使して、徹底的に腐女子なことを隠すのが病的に上手いくせに、自分のことになると途端にそれがガタガタと崩れる。なんて下手くそなんだ。

「成海…。」
「じゃ!あとでね!定時にちゃんと帰るから!」

宏嵩に有無も言わさず、逃げるようにバッグを持ってさっさと行ってしまった。

何の話が知らないが、言いたいことでもあるならはっきり今言ってほしい。モヤモヤのまま仕事するのは、俺も成海も気持ちが悪くないか?
悪い話じゃなきゃいいけど。例えば、別れ話とかなら、そりゃあ…聞きたくないな。でも、あの反応は違うかな。

宏嵩は煙草を取り出しながら、喫煙所に行ってからデスクへ戻ることにした。



                                                        • -

「お疲れ〜!」
「お疲れ。」

宏嵩の家に着いて早々、成海と宏嵩はソファに座り、乾杯を交わしてビールを飲んだ。
昼の違和感は今のところ見えないが、内心どんな話をどうやって聞き出そうか、機会を窺う宏嵩。そんな宏嵩を他所に、成海は何のゲームやる?などと、話す気がまるでない。というか、俺に話を突っ込まれないように、気を逸らしているのがバレバレだ。

「…成海、何かあったら俺に言ってよね。」

ビールをグイッと半分辺りまで飲み、テーブルへ置いた。そして、宏嵩は成海の肩を引き寄せ、コテンと成海の頭へもたれかかる。

「…ひろ、たか。」

成海は急に宏嵩へ抱きついた。思ってもいなかった返しに、宏嵩はついキュンとなる。ただ、何か言いたげのような気がしたが、まずは抱き締め返したいと思った。

「何かあった?」

宏嵩も成海を抱き締め、必然と近くにある耳元で優しく言った。成海は抱き締めていた腕を緩めながら顔を上げたから、宏嵩も視線を落とすと上目遣いの成海と目が合った。
これはもうキスしてもいいってことだよね?宏嵩は成海へキスを落とした。

「ふ、う…。」

徐々に深いキスへ変化させ、時折舌を入れてみると、ちゃんと成海も返してくれた。吐息と共に声が漏れ、宏嵩は2週間ほど前のあの夜を思い出す。
一度唇を離すと、唾液が糸を引いて、すぐに切れた。少し荒い吐息。もう一度唇を重ねようとしたが、

「ちょ、っと、タイム。」

成海が宏嵩の唇を、掌で塞いで制止させた。

「あ、の…聞きたいことが…ありまして。」

ようやく話してくれるのか。でも、今このタイミングとは。結構気持ちが上がってたのに…まあ、モヤモヤしたままでいるのも嫌だからなあ。

「なに?」
「…。」

宏嵩と成海は身体を離し、ソファの上に向かい合って座った。
切り出した割に、続けようとしない。歯切れの悪い成海に、若干のいらつきを覚えた。

「宏嵩、初体験いつ?」
「は?」

何を言い出すかと思えば。唖然としている宏嵩に、歯切れの悪い話し方で成海は続けた。

「…いつ、どんな人としたの?」

初体験、とは、この手の話からすると、初エッチというのとでいいのだろうか?全く本当に話が見えてこない。何を今更こんな話?

「いきなり、なに?」

宏嵩の声はわかりやすいくらいにおこ、である。いや、怒っている。宏嵩の反応はもう充分予想通り。この手の話題を、さっきまでの甘い雰囲気をぶち壊して聞いたのだ。

「だ、だって!宏嵩、エッチ…とか興味なさそうだと思ってたら、あの日めちゃくちゃ慣れた感じで攻めてきたんだもん!」

一気にまくしたてて言った成海は、なぜか少し怒ってる。いや、怒りたいのはこちらの方です成海さん。

「何人と付き合って、どんな人としたのかなって思って…。」

身体をはじめて重ねたあの夜。もう頭がクラクラするくらい、宏嵩に甘ったるい攻め方をされた。同時にすごく大切にされていて、愛されてるなと嫌ってほど実感してしまったんだ。だって、あんなに激しく求めてきたのに、優しかった。
今思い出しただけでも、こころも身体も熱くなる。

「じゃあ、成海は?」
「え、わたし!?」

俺だけに言わせるのはフェアじゃない。聞きたいのなら、まずは自分から手の内出してよ。
…いや、本当なら別に聞きたくないんだが…。


成海は今日、というか数日前から宏嵩に聞こうと思っていたことを口にしたが、こうやって返されることも重々承知だった。やはり宏嵩はフェアを求めてきた。そりゃそうだ、わたしだってそうするよ、でもさ。

「わたしの付き合ってた人の事、宏嵩よく聞いてもらってたじゃん。」

確かに。別に聞きたくもなかったのに、俺も大概諦め悪かったせいで、よく聞かされていた。

「…何人とと付き合ったの?」
「…4人。」
「じゃ、誰といつ初エッチした?」
「…高校のときの2人目の人と。」

やっぱり聞くんじゃなかった。あのときみたいに胸糞悪いな。

「宏嵩は!?」
「…。」
「何人と付き合ったの?」

成海は強制的に宏嵩へ聞き返した。フェアでしょ、ちゃんとこたえて。

「…誰とも付き合ってないよ。」
「え、でも、経験…。」
「初エッチは大学んとき。2つ上の先輩と。」

宏嵩は半ば投げやりにこたえた。そんな俺のこたえに成海はキョトンとする。

「え、付き合って…。」
「付き合ってなかった、彼女じゃない人とそういうことした。」

これで満足?宏嵩からの驚きの告白に、成海は目を丸くしながら宏嵩を見ていた。

「…意外…。」
「でも、すげー後悔した、しなきゃ良かったって相当落ち込んだ。」
「なんで?」
「ただ虚しいだけだったから。」

ただ、流れた形で、興味本位という形で、あの彼女としてみた当時。本能的な欲は満たされたかもしれないが、こころが全く満たされなかった。

「軽蔑した?」

このことは話す相手がいないとはいえ、誰にも話すつもりはなかった。それなのに、一番聞かれたくなかった成海に話すことになるなんて…。
適当にこたえてもよかった、嘘で塗り固めてもよかったかもしれない。

でも、成海には、できれば誠実でいたかった。俺なりに、相当大切な存在に対しては。

「…ううん、そんなことしないよ。ただ、ちょっと…結構びっくりしただけ。」

宏嵩は成海に、正直ほっとした。…成海は嘘は付かないから。だから、それは本音だよね?嫌われてしまいたくなかった。

軽蔑なんて、そんなことしないよ。宏嵩だって、人と関わりを持つことが極端に少ない宏嵩にだって、後悔したり傷ついた経験だってあるでしょう?それはわたしが知らないだけで…わたしと宏嵩の数年間の空白の間に。

「どんな人?」

まだ続けんの、この話。正直もう終わりにしたい、こんな話してもおもしろくないよ。
そう思っている宏嵩に、成海は真っ直ぐの視線で見つめてきた。可愛さ余って憎さ百倍、と言ったところか…真剣な表情も可愛いとも思ってしまうし、イラッとしてしまうのも本音。

「…大学内でいろいろ有名な人だった。」
「いろいろって、美人だとか?」
「…ん、まあ、そんな感じ。」

嘘は言っていない。良くも悪くも有名人だった彼女。
あのときの彼女は『ただセックスがしたい』とそういう割り切った関係を求めてきたから、本人が言い切った通り(大学内で話すことはあっても)、事後はそれはとても清々しいほどにそれっきりだった。本人が『満足した』と言って、それで終わったのだ。

「…いろいろ教えてもらったの?」

天然無自覚バカ。そういうこと普通に聞いちゃう?やり方も何も知らなかったから、そりゃいろいろご教授してもらったよ。でも、もういいよね。

「じゃあさ、成海センセはどうやってしてもらったの?」

宏嵩は成海をソファに押し倒した。そして、乱暴に唇を塞ぎ、舌をねじ込んだ。

「ん、ふ…ひ、ひろ…!」

海の声なんか無視して、宏嵩は逃げようとする成海の顎を左手で抑えながら、舌を執拗に絡めて離さない。そして、ワイシャツを下からたくし上げ、成海の胸の膨らみを右手で揉みしだく。

「んっ!あ、っ!」
「小さいって気にしてるけど、それよりこここうされるの好きなこと、そいつは知ってたの?」

やっと離してくれた舌。唾液が糸を引いて、すぐに落ちる。
宏嵩の指が膨らみの頂点を転がしてはキュッと摘む。

「あ、だ、め!ひろたか!」

宏嵩は顔を隠そうとする成海の右手を左手で掴んだ。隠すなんて許さない。その興奮してる顔をもっとよく見せてよ。

「ーーーっ!」

右手はするすると下半身を滑り、今度はスカートをたくし上げ、躊躇なく下着の中に入る。どうにか足を閉じようとするが、やはり男だ、敵わない。

「は、あ…んんっ…。」

宏嵩の中指は花弁と割れ目を上下に動く。粘着音が聞こえるほど、既に成海の秘所は湿っていた。そのおかげでスムーズに愛撫できる。

「あぁっ!」

割れ目をかき分けて、宏嵩の中指が突起に当たったため、成海はビクリと大きく反応した。突起は大きく膨れている。

「成海、気持ちイイ?」
「や、あ!はあっ、あん!」

突起を指の腹で撫でてみたり、少し押してみたりするたびに、成海の甘ったるい声は漏れ出す。宏嵩はそんな成海の乱れた表情を見て興奮したし、もっととろけきってほしいと思った。

「ーーーぁあっ!」

成海のナカへ中指がゆっくりと挿いっていくと、ナカはとても熱く、宏嵩の中指をねっとりと包み込んだ。そのまま抜き差しをしてみると、グチョグチョといやらしい粘着音。

「や、あぁ!あっ、あぁん!」

成海は涙を浮かべながら、もう声を我慢することなく、興奮に酔っているように見えた。そして、指がまた1本増えたかと思うと、宏嵩のシャツをギュッと握り締めて必死になっている。その姿が可愛くて、でも、そんな姿も過去の元彼達が見たかと思うと、激しい嫉妬心に駆られた。

「元彼達もここ、こうやった?」
「や、やだあ…ひろ、た…ーーーっ!」
「ここ、好きなんだ?」

あの日の夜のように、宏嵩は成海の奥の一番敏感なところに指を当てる。反応が大きくなり、甘い声が出る。成海は我慢できず、涙が零れた。

「あっ、はあっ、あん!きちゃ…!」
「絶頂きなよ、成海。」
「〜〜〜っあぁっ!」

宏嵩の指によって、ナカと身体がビクッと大きく痙攣した。きゅうっと締め付けられた指で、成海が果てたことを実感する。宏嵩がゆっくりと指を引き抜くと、それも刺激になったようで甘い声を漏らしていた。

「はあ…はあ…。」

成海は左腕で顔を隠しながら、荒い息遣いを整える。宏嵩は引き抜いた指に絡まった蜜を握り締めながら、今の表情の見えない成海を見つめてひとつ溜息を大きくついた。

…成海に酷いことをしてしまった。
嫉妬心によって生まれた怒りを表しながら、成海の了承を得ずにしてしまうなんて。彼氏というから良いとは言えない。

「…ごめん、成海…。」

冷静になるには遅いとわかっていたが、成海のことが一気に心配になってしまった。痛くないか、傷つけて…しまっただろうか…。

「怒ってないよ、宏嵩。」

成海はまだ少し荒い吐息と一緒に、そう言った。そして、顔を隠していた左腕を離し、まだ潤んだ瞳とやっと目が合う。宏嵩の頬に触れる成海の左手。宏嵩はぴくりと反応したが、目が離せない。

「わたし、今まで絶頂ったことなかったの。ひとりよがりなセックスばっかで、あんまり気持ちイイって思ったことなくて、でも、それ言ったら嫌われちゃうと思ったから、絶頂ったふりとかもしてたんだ。」

指がするする滑り、宏嵩の唇に触れた。

「だから、宏嵩がはじめて。わたしのこと、絶頂かせてくれて…その、すごく、気持ちイイよ。」

言葉の後半は少し顔を赤くしながら、恥ずかしそうに言った。照れながら嬉しいことを言ってくれた成海をとても愛おしく思ったが、それでも不安のまま。

「痛くなかった?」
「痛くないよ。なんか、言葉は確かに怒ってるってわかったけど、指は、なんていうか…優しいんだもん。傷つけないようにしてくれたんでしょ?」

成海の問いかけに、宏嵩は小さく頷いた。決して傷つけたかったわけじゃない、それは本当なんだ。
成海は少し微笑みながら続ける。

「わたしね、はじめてした日の宏嵩にびっくりしたの。さっきも言ったけど、興味なさそうって思ってたから。なのに慣れてるっていうか、ねちっこくて無自覚Sっぽいのに優しくて…。でも、気持ちイイし、その、大事にされてるなって思ったし、愛されてるのすごく実感したんだ。」

柔らかく笑って言う成海はとても恥ずかしがっていた。
あの日以降、自分の中で定期的に思い出す、普段よりも強引で、とても嬉しい宏嵩。
だけど。

「わたし、勝手に宏嵩はわたしがはじめてなんだって思ってたの。」

成海はうるっと涙を溜め始め、少し声を荒らげて言ったから、宏嵩は戸惑ってしまった。

「なのに、違った。わたし、自分のこと棚に上げといてアレだけど、宏嵩がわたしじゃない誰かとしてたんだって思ったら、なんだか悔しくて…嫉妬してたの!」

悔しそうな表情を一瞬見せたが、成海は左腕で顔を隠した。

宏嵩とこうやって恋人になってから、あまりにも宏嵩がわたしのことをとても大切にしてくれるから、わたしみたいに過去にも同じように愛されてた人がもしいたのなら…非常に勝手なことだけど、不快だと思った。これは嫉妬。顔も知らない人に対して、激しく嫉妬してる。

「聞かなくてもいいことだってわかってた。宏嵩が怒ることも予想できてた。でも…。」

どんな人か知りたかったし、知りたくなかった。比べたって意味が無い、だって、宏嵩はわたしが好きなんでしょう?
わたしも好き。宏嵩が好き。

「成海。」

宏嵩が優しく名前を呼んだ。そして、宏嵩の右手が頬に触れたので、成海はゆっくり隠していた左腕を顔から離す。すると、宏嵩は優しくキスをしてくれた。

「成海も嫉妬するんだ。」
「するよ、だって、わたしの宏嵩だもん。」

宏嵩の右手に、成海は左手を添えた。

嫉妬してたなんて、俺と同じように想っていてくれてたなんて。いつも自分だけが嫉妬しているものだと思っていた。俺ばっかり好きだとか一緒にいたいと思っていると…てっきり。

「俺も嫉妬してた。」

過去が消えるわけじゃない。でも、何もしなかった数年間の空白の間に、成海があんな乱れた表情を誰かに見せていたと思うと、非常に不愉快になる。
だから、まだオタ友だった頃に聞く話は苦痛だったよ。成海も大概だと思ったが、俺も相当大概だ。

「俺の、成海でいいの?」
「宏嵩のだよ。」

成海は両腕を宏嵩の首に回した。そして、グイッと引き寄せ、抱き締めた。

「重くない?」
「いいの。」

ぎゅうっとさらに抱き締める成海の背中に、宏嵩は両腕を回した。重いだろうなと思いながら、素直に成海の胸へ顔をうずめる。

「宏嵩。」
「なに?」
「キスしたい。」

成海からそう言ってくるのははじめてだった。
顔を上げた宏嵩と成海の視線がぶつかる。

「して?」

少し首を傾げながら、甘える成海にゾクリとした。ホント、成海には敵わない。
宏嵩が少し身体を起こし、右手が成海の頬を触れる。

「あ、ちょ、ちょっとタイム。」
「今度はなに?」

自分からおねだりしてきたくせに、寸止め。今もうキスする雰囲気だったろうに。

「シャワー浴びてから…ね?」

もじもじと照れくさそうに笑いながら言ったから、宏嵩もついつられて笑ってしまった。

「だめでーす。このまま強行しまーす。」
「え、ちょ、ちょっと待っ…!」
「待たない。」

宏嵩は成海の言葉を唇で塞いだ。何回も唇を重ね、深いキスへ変え、舌を絡める。成海もすぐに舌を絡めてくれた。これはこのまましてもいいっいう合図だよな?