小説置き場(宏成:名古屋)

『ヲタクに恋は難しい』宏嵩×成海 激推し小説書いてます

甘さ余ってしまう

イチャイチャしてます。
全年齢対象ですが、ダイレクトな表現ありのためワンクッション。




━━━━━━━━━━━━━━━







静かな宏嵩の部屋に、カタカタとコントローラーを操作する音だけが響く。成海はシャーペンを置き、ネタ帳を閉じた。うーん、と背伸びをし、テーブルへ突っ伏す。宏嵩は先日買った新しいゲームに夢中で、成海はというと次の新刊(18禁)のネタを考えていた。
…と言っても、実はもうネタは出来上がっていて、構想も流れもオチまでもなんともスムーズに思いついた。考えていた、というより、思い切るべきかやめるべきか、それを悩んでいた。
なぜ、それをしないか。

つまり、それは自身の体験を元にしているから。

(やっぱりめっちゃくちゃ恥ずかしいよな〜…。)

推しカプに宏嵩としたことをつい当てはめてしまったのだ。そうしたらば、なんと良作になりそうな流れだ!腐女子で何事もBL変換してしまう悪い癖。でも、腐女子の前に乙女なのだ。
無自覚ドSの宏嵩にわたし、めちゃくちゃ興奮しちゃったんだよ。普段セックスとか全然興味なさそうなくせに、スイッチ入った途端の濃厚なキスとか、言わなくてもいいのにわたしがどれだけ濡れてるかとか言うし、その指までも見せつけてくるは、意外と遠慮無しにわたしのこと絶頂かせてくる。もう、ギャップだ、これなんだよ。
正直、毎回キュンキュンさせてくる。恥ずかしさでもういっぱいになるけれど、ああいう宏嵩も嫌いじゃない
…いや、結構好き。

きっとわたしだけじゃない、この話聞いた乙女ならきっと同じようになるはずなんだよ。だから、これを元に考えてしまったんだよ。

だけど、手に取った人達は知らなくとも、宏嵩がわたしに言った言葉とか、どういう愛撫をしてきたとか、そういうのをお披露目することになってしまう。

いやー!やっぱりないか!だめだ!



成海はバッと勢いよく顔を上げると、ちょうどキリの良いところだったのか、宏嵩もテーブルへコントローラーを置いてソファから成海の横へ座った。

「ネタが思い浮かばんのかね、成海どん。」
「えー、んま、そんなとこですよ、宏嵩どん。」

まさかわたしたちのセックスのことを考えていたとは思ってもいない宏嵩。そりゃそうだ、言えるわけがない。冗談混じりに聞いてくれてよかった、宏嵩は時にとても鋭いから。わたしのこと、実はよく見ている。

「宏嵩、このあともするんでしょ?」
「まあ、そのつもりだったけど…でも、止めようかな。」

宏嵩は気だるそうに頭を掻きながら、コントローラーを操作して電源を切った。

「え、しないの?」
「せっかく成海もキリが良さそうだし。」

テーブルに右肘をついて、成海を覗き込む宏嵩。

「せっかくだから、ネタを提供してあげようかと思います。」
「えっ!?」

宏嵩はそう言うと、成海の後頭部に左手を回しグイッと引き寄せた。そして、触れるだけのキス。そのままもう一度、今度はもう少し触れて。それを何度も繰り返す。深くなったかと思うと、するりと舌が入ってきた。そしてそのまま押し倒される。

「…ふ、ぅ…はあ…ん…。」

一気に激しく絡みつく宏嵩の舌が熱くて、我慢できない声が漏れる。結局成海も宏嵩の舌に絡めたくなってしまった。離しては名残惜しそうに繋がる唾液を、また繋げようとするかのようにまた唇が塞がれる。

ほら、こういうところだよ。

「なんかヒントなった?」

やっと開放された唇。宏嵩が少し笑ってみせるもんだから、成海の顔がかぁーっと一気に火照った。
本当にずるい男だ。ネタ提供と言いつつ、単純にしたかっただけでしょ。

「もっとしていい?」

うん、これもわざと。

宏嵩は自分の経験値が少ないから、この手の話に関しては言ってくれないとわからないし、聞かないとわからないとも言っていた。結局それがこうやって聞いてくることなのだけれど、今わたしも舌を絡めたでしょうが。それがこたえになるはずなのに、わたしの反応を楽しんでいる節がたまーに見受けられるんだ。

「…だめだって言ったら?」
「だめなの?」

まさかだと思わなかった!と宏嵩の表情が分かりやすくキョトンとした。こういう表情も好き。素直なんだよね。

「だめじゃない。」
「よかった。」

ふにゃ、っと柔らかく、落とすように宏嵩は笑う。わたしはこの宏嵩がとても好きだ。
宏嵩自体はよく笑うが、それがどうも周りによく伝わっていないようで、よく驚かれることが多い。でも、こうやってよく笑うの。

…これはわたしに、だけかな?

「ネタ提供ってまだ続くの?」
「続けるのは続けるけど、やっぱネタ提供はやめる。」
「なんで?」
「自分で言っといてなんだけど、本にされると思うと恥ずかしくなってきた。」

宏嵩が照れながらそう言うもんだから、成海は思わず吹き出してしまった。笑いを必死で堪える成海につられ、宏嵩もくしゃっとして笑った。ふたりの笑い声が重なる。

成海はするりと両腕を宏嵩の首筋に回した。それを合図と受け取った宏嵩は、また落としたように笑って優しくキスをしてくれる。成海も宏嵩にキスを返した。



ヒントくらいにはしておこうかな。やっぱり本にするのはやめよ。
本の中とはいえ、こんな宏嵩は誰にも教えたくないや。