知らなかったこと
[行き交う熱情]の続きになります。R18になりますので、苦手な方はご注意ください。
━━━━━━━━━━━━━━━
ふたりの吐息と粘着音が部屋に響く。ベッドへと押し倒し、成海に跨った宏嵩。成海と宏嵩の両手は繋いだままで、ふたりの掌が汗ばんでいた。
息継ぎをするために唇を離すが、すぐに繰り返されるキス。これまで何度もしてきたキスより、もっと深い。
「…ひ、ろ…ちょ、ちょっ…と…息…。」
夢中で吸い付いて、舐めて、絡めた舌と唇。宏嵩は成海の途切れ途切れの言葉で、ようやく唇を離した。ふたりの唾液が名残惜しそうに繋がっていたが、そのうち切れた。
「はあ、はあ…。」
ふたりの呼吸音が重なる。見つめ合ったまま呼吸を整える。
こんなに激しく求められた、求めた唇が熱い。からだも、こころも。
(なんか…心臓の音が、やばい…。)
宏嵩に聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい、高鳴ってる成海の鼓動。スイッチが入ったとはいえ、こんなねっとりとしたキスははじめてで、普段の宏嵩からは想像できないくらい…なんて言うか、男だ。
(…もっと…。)
宏嵩は成海の唇に再度ゆっくりとキスをした。今度は優しく、触れるか触れないかくらい。
暗い部屋でふたり、触れ合う肌と肌。触れたら熱くて、触れたらもっと触りたい。
眼鏡を通して見る成海の瞳。少し潤んでいて、妙な気分にさせられる。興奮していた。可愛かった。
「成海…。」
宏嵩が名前を呼び、こたえるように成海は目を閉じた。まだ荒いふたりの息遣いは重なる。そして、また舌を絡ませ合った。
「…ん、はあ…。」
舌と舌を絡ませるたびに、成海の吐息が漏れた。その声を聞く度に、宏嵩はゾクゾクとからだが熱を帯びていく。うっすらと目を開けながら舌を絡ませると、成海も少し目を開けた。ふたりの視線がぶつかる。からだが、熱くなった。
「ーーーっあ…!」
宏嵩の舌は成海の首筋へと移動する。ざらっとした感触が首筋を這う。成海の全身がゾワゾワし、声が我慢できない。漏れる吐息を聞きながら、宏嵩は首筋にもキスをした。
「成海。」
「んっ!」
耳元で名前を呼ばれた。そして、舌が耳をとらえる。宏嵩の声が、吐息が、粘着音が。もう、すぐ傍で聞こえていて、成海の耳から全身へと這うような感覚。びくっとからだが反応した。
「ひ、ろたかぁ!」
「なるみ…。」
ぴちゃぴちゃと音を立てながら、宏嵩は成海の耳を舐めた。また首筋へと舌を這わせ唇へと戻ってくると、成海の唇をぺろりと舐めた。そして、また舌がねじ込まれ、絡まる。
(…今…これ、相当…エロ、い…。)
成海がいつも読んでるBL本で、こんなシチュエーションよくある。うわー!エロー!なんて客観的に見て興奮してた…あれ、今わたしがその状況?思考が追いつかない、身体が、ナカが、熱くなる。そのくらい今、興奮してる。
「…は、あ…ひろ、たか…。」
「…なに?」
また息継ぎをしたタイミングで見つめ合った。宏嵩も息遣いが荒い。
「眼鏡…取ってよ。」
「見えないじゃん。」
「見、えなくていいよ、恥ずかし…。」
少し目線を外した成海がとても可愛かった。興奮している、照れている。全身でそれを感じる。
成海は繋いだ両手を離し、宏嵩の眼鏡を取った。久しぶりに見る、宏嵩の素顔。
「取るなよ。」
「だから、恥ずかしいし、邪魔…でしょ?」
確かに。いつも以上に近い距離だから、眼鏡が少し鬱陶しく感じていた。それに、“見えない”と言いつつも、成海の表情はわかる。こんなに近い距離だから、尚更。
宏嵩は上体を起こすと、眼鏡をベッド横のデスクへと置いた。成海の両手を引いて、成海も上体を起こし向かい合って座った。
成海の両手を宏嵩の両手で包んだ。
「俺も、恥ずかしいよ。」
鼓動が成海に聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい、妙に大きく聞こえる自分の心臓の音。気持ちを伝えたあの日もそうだった。自分で崩すことにしてしまったあのとき、成海が拒むかもしれなかったから。あのときは吐き気も感じていた…覚えが…。
「宏嵩。」
名前を呼んだ成海は、ん、と目と唇を閉じていた。つまり、キスをしてほしいと、いうこと。
「成海…。」
今日だけで、何回名前を呼んだだろうか。愛おしい名前。まるで口癖のようだ。
宏嵩は包んでいた両手を離し、成海の両肩に触れながらまたキスをした。ぴくりと背筋が反応する成海。宏嵩はキスをしながら、身体に巻かれたバスタオルを取り、床へ大雑把に置いた。
「なるみ…。」
名前を呼びながら、宏嵩はぎゅっと抱き締めた。なんて細い身体なんだ。抱き締めたことは何度もある。だけど、はじめて素肌で抱き締めたことで、こんなに小さかっただろうかと思った。
成海も抱き締め返しながら、宏嵩の肩に顔をうずめる。宏嵩の身体ってこんな感じだったっけ、と成海も宏嵩と同じようなことを感じていた。
知っていたようで、知らなかった。
全身、肌が触れ合ってる箇所全てで熱が行き交う。
宏嵩は少し身体を離すと、成海へキスをし、また舌を絡めた。成海も吐息を漏らしながら、懸命に舌を絡めこたえる。
そのまま押し倒すと、宏嵩は成海の首筋から鎖骨、そしてふたつの膨らみへと順繰りに舌を這わせていった。
「ーーーっ、はぁん、ふぅ…っ!」
くすぐったいような、ゾクゾクするような、独特のこの感触。宏嵩の触れたところが熱くて、溶けてしまいそう。なんて、優しい触れ方。
宏嵩は夢中で成海の肌に舌を這わせ、キスをし、掌で触れる。とにかく熱くて、甘く感じる、不思議な感覚。触れるたびにいちいち漏れる成海の吐息がいやらしくて、できるだけ理性を保つように気を張っていることを、きっと成海は気づかない。
「ーーーっあ!」
宏嵩の掌が成海の胸の控えめな膨らみに触れた。貧乳、なんて冗談で馬鹿にしたことはあったが、なんだ、素肌で見ると思いのほかあるし、何より柔らかい。
「意外と、あるじゃん。」
「う、うっさい!ばかぁ…!」
成海は両手で顔を隠しながら文句を言った。素直な感想ではあったが、冗談と思った?本気なんだけど。
「ん!あぁ、ん!」
柔らかい膨らみを優しく揉みしだく。そのたびに甘い声が漏れ出して、たぶん成海は我慢しているつもり。でも、その我慢してても漏れる声が、宏嵩をより興奮させた。
「や、やあっ!あ、ん!」
膨らみの固くなった頂点を、宏嵩はコリコリとつまんでは弄る。成海の声はより高く反応し、ビクビクと身体も反応する。
最初は片方だけ。今度は交互に。そして、両方同時に、つまんで弄る。
「あ、あ、んっ…ーーー!」
反応が可愛くて、もっと見たくて、宏嵩は膨らみへと再度舌を這わせた。そして、その固くなった頂点を舌でぺろりと軽く舐める。
「あんっ!」
その瞬間、成海の身体はびくりと大きく反応した。宏嵩は舐めたり、吸い付いたり、空いてる片方の膨らみを揉みしだいたり、夢中で行いながらそのたびにする成海の可愛らしい反応に興奮した。
「ひろ、た…かぁ…!」
甘い声で成海が名前を呼んだので、宏嵩は一度顔を上げ、成海の両手を無理矢理広げた。荒い吐息を整えながら、成海はもう一度“宏嵩”、と名前を呼んだ。その表情はとろけてしまいそう。
「成海…可愛い…。」
宏嵩は少し笑って、またキスをしてきた。『可愛い』なんて、こんな状況で言うなんて…卑怯だ。ずるい。でも、嬉しい。
余裕なんてない。もう、理性が飛んでしまいそう。成海が、俺のしていることで、興奮してくれている。身体は熱くて、荒い息遣い。恥ずかしいから両手で隠してた表情は、甘く、溶けてしまいそうだった。
可愛い。
素直にそう思ったんだ。同時に、興奮がおさまらない。冷静じゃいられない。
[newpage]
覆いかぶさっていた宏嵩は一度離れ、成海を見つめた。そのまま自然と惹かれ、何度もキスをした。吐息はお互い荒くなる。
舌を絡めながら宏嵩の右手は徐々に下半身へと移動した。ぴくぴくとそのたびに反応し、強ばる成海。宏嵩の左手は胸の膨らみを揉みしだき、右手は下半身の肌を滑る。そして、ついに成海の秘所へ指が触れた。
「ーーーっあ!」
舌を絡めながら、つい大きく発した声。その声に一度は宏嵩の指が止まったが、すぐにまた触れられる。
「~~~っんん!」
声にならない、声が部屋に響いた。恥ずかしい。でも、もっと、なんて欲求が…。
(濡れてる…。)
成海の秘所へと触れた指が感じた、しっとりと濡れた感触。成海の声が、身体の反応が、成海が興奮してくれていることがわかっていた。でも、正直自信がなくて、夢中になり過ぎたかなんて思ったけど…杞憂だったようだ。
「濡れてる。」
「ゆ、言わないで…!」
唇を離してわざと成海に言った。成海のおそらく真っ赤になって恥ずかしがってるそのとろんと表情が、異常に宏嵩を興奮させ、自身のものが一気に熱をこもらせた。
宏嵩は上体を起こすと、成海を見下ろすように座り直した。宏嵩の両手が、固く閉じた成海の両足を無理矢理開かせる。成海はまたも両手で顔を覆って隠した。
「触るよ。」
「ーーーあ、や、あんっ!」
閉じようとする成海の足を抑えながら、宏嵩の右手が秘所に触れた。びくりと大きく反応し、大きな甘い声を出す成海。しっとりとした秘所は熱く、滑りを帯びている。
花弁をかき分けながら、上下左右に優しく触れていくと、声と比例して身体が反応した。そして、花弁の割れ目から蜜が溢れ出す。
(…うわ、え、ろ…。)
溢れ出した蜜を指に絡ませながら、宏嵩は割れ目をなぞった。そのたびに溢れる蜜が指へ絡むごとに、感じたことのないくらいの興奮を覚える。すると、つんと突き出た突起に指が触れた。その瞬間、成海の身体がより反応し、大きく腰が震えた。
「なるみ…。」
右手はそのまま秘所に触れたまま、成海に覆いかぶさって成海の右手を取ってみると、涙を浮かべて恥ずかしそうにこちらを見ていた。こんな成海の表情ははじめてだ。笑った表情も、怒った表情も、悲しむ表情も見ている。でも、こんな甘くとろけてしまいそうな成海は知らない。欲情している表情。
荒い吐息が落ち着く様子はない。ふたりは指を絡ませて、お互いの掌をぎゅっと握り締めた。
「ひろ、た、かぁ!あぁん!」
そのまま指を上下に滑らせ、突起と割れ目を交互になぞった。そのたびに甘い声を発しながら、成海はビクビクと反応し、堪えているはずなのに自然と声も身体も反応してしまう。
もっと、もっと、見ていたい。
「ひろたかぁ!」
涙で潤んだ成海の瞳。そこにひとつキスを落とした。
上下に滑らせていた指が、秘所の穴を見つけた。宏嵩は迷わず、中指1本ゆっくりと挿れた。
「ーーーあ、あぁっ!!」
今、たぶん、中指。それが今、挿いってる。
煙草を吸う、煙草を持つ指が好きだ。宏嵩は長身でガタイがいいけど、特別筋肉質とかじゃなくて、でも、ガリガリとはいうわけでもなくて。手も意外と大きくて、指が、意外と指が骨ばってて、すごく好きだと思ってた。宏嵩のその、指が挿いってるんだ。
「や、やぁん!あ、あぁっ!」
ゆっくりと傷付けないように、宏嵩は指を出し入れした。成海のナカはとても熱くて、ねっとりと指を包んでくる粘着性のあるナニカ。出し入れするたびに可愛い声とビクビクとする身体。成海の左手は顔を覆うのをやめ、シーツをぎゅっと握りしめてた。どこかに力を入れておきたかったのだろう。そのおかげで、成海の顔がよく見えるようになった。眼鏡が無くても、この距離なら充分わかる。成海の瞳が限界を超えたせいで、溜まっていた涙が零れた。
ゆっくりと、でも、少し速度を速めたり、またゆっくりにしてみたり…。その都度蜜は溢れ、零れた蜜はシーツへ染み込んでいった。たぶん、いや、とても気持ち良くなってくれてる、はず。
「ちょ、ちょっ、と…あぁっ!」
宏嵩の指が2本に増えたのがわかった。さっきより太くなったし、音が…いやらしい音がする。
「あっ、あっん!や、あん!」
指を増やしてみたが、痛がる様子もなく、より反応が甘くなった。そして、部屋に響く宏嵩の荒い息遣いと、吐息混じりの成海の声と、グチュグチュとした粘着音。よりふたりを興奮させる。それはもう、夢中だった。
(な、なんかっ…!)
宏嵩は知ってか知らずか、ナカの妙に触ったらだめなところに当たる指。そこ…だめ。きてしまう。奥が熱い。こんな、感覚…知ら…!
「だ、だ、めぇ!ひろ、たか!あぁっん!」
(ここ、いいのかな…?)
成海の反応が変わった箇所があった。これがよく言うスポット?よくわからないけど、成海が興奮してるならここなのか。反応がとても可愛くて、だめと言われてもやめたくない。
止めて!このまま、これ…!
「や、やあぁん!!」
ビクビクっ!と一番大きく浮いた腰。宏嵩の指を、ナカが締め付けてきた。ぎゅっとすごい力で成海は宏嵩の左手を握り締めた。その瞬間宏嵩は指を止め、その反応に驚いた。
ナカに電流が走ったみたいな、そんな…はじめての感覚…。
「はぁ、はぁ…。」
シーツを掴んでいた左手を離し、恥ずかしくて顔を隠す成海。まだ身体がぴくぴくと敏感だ。
宏嵩は自身の右手の大量に絡まって糸を引くその蜜をじっと見つめた。どくどくと自身のものがより一層熱を持ち、固くなったのを感じる。
(は、はじめて…絶頂っちゃった…。)
成海は余韻に浸りながら、自分の身体と宏嵩に驚いていた。
今まで付き合って、セックスはしたことはもちろんあったけど、実は絶頂ったことはなかった。『気持ち良かった』なんて、相手に嫌われたくなくて嘘をつくのが当たり前だった。相手が気持ち良ければ、それで良かったと思ってた。
なのに。
(こんな、セックス…知らない…。)
ボーッとしながら、そう思った。とにかく、気持ち良かった。おかしくなるかもって思って、やめてほしいのに、やめてほしくなかった。
「成海。」
名前を呼ばれ、右手を握り締められた。成海が左手を離すと、すぐ近くに宏嵩の顔があり、そのままキスをされた。最初は軽く、すぐに深くなって、舌が絡まる。
ナカが、また熱くなった。
「…絶頂った?」
「~~~っ!き、聞かないで!」
急に聞かれた恥ずかしいこと。ぷいっと目線を外した成海を見て、宏嵩の口元が自然と緩んだ。照れてる表情が見たくてわざと聞いてみたら、予想以上に可愛らしい反応。もう一度、見たくなる。
「成海、もっかい。」
「え、ちょ、ちょっと!」
あっ、と同時に、宏嵩は成海の両足を広げ、秘所へ顔をうずめた。
「あ、やぁっ!だ、だめぇ!」
舌が秘所を這っているんだとすぐにわかった。宏嵩の舌が、ざらりとした感触が、秘所を舐めている。恥ずかしくて、閉じようとする両足を、宏嵩は許してくれない。
蜜が溢れ出す。まずは花弁から、次に割れ目を舌で、途中キスを足の付け根に落として、あとは突起に舌で触れてみる。
「ひろ、ひろ…たかぁっ!だ、めえ…あぁん!」
指の出し入れの反応もすごかったが、こちらの反応もすごい。成海は気づいてる?さっきから腰が浮いてる。気持ちイイ?それなら、嬉しい。もっと、もっと、見せて。
どんどん溢れ出す蜜を宏嵩が吸うと、いやらしい粘着音が響いた。そして、大きくなった突起を舌が触れると、びくりと大きく反応する。その突起をちゅうっと吸ったり、舌で舐めたり、また中指と薬指を穴に挿れた。
「やだ!だ、だめ、だって、ああん!」
成海は両手でシーツをがっちりと掴んで力を込めた。どこかに力を込めていたい。涙が勝手に溢れてしまった。
突起を吸われながら、出し入れされる指2本。さっきみたいに指が触れてほしくないところに当たるし、そもそも突起そんなに舐めないで!おかしくなりそう!
「あ、あっ、ああ!だ、めえ!気持ち…イぃ!」
今、気持ちイイ、って言った?ビクビクしながら腰が浮いてる成海が言ったんだ。
「絶頂ってもいいよ、成海。」
そう言って、出し入れする指の速度を速めた。そして、ちゅうっと突起を吸い付いた。
普段とは違う、少し強引で、でも優しい宏嵩。ずるい、男なんだ。
「あああっ!絶頂っ…く…!宏嵩ぁっ!」
びくりと大きく腰が浮き、がくがくと下半身が強ばった。はあはあと荒くなった息遣いをしながら、全身の力が一気に抜ける。成海は時折大きく息を吸い込んでは、吐いて、深呼吸を繰り返した。身体に力が入らない。
[newpage]
「すごかったんだけど、成海、ほら。」
宏嵩は蜜を成海に見せつけるように掌を広げて言った。糸を引いていて、なんていやらしい。
「み、見せなくて、いいから!」
「気持ち良かった?」
「~~~!」
成海はかぁーっと顔が熱くなるのを感じた。顔から火が出てきそう。なんて意地悪なんだ、恥ずかしいに決まってるのに!
何も言ってくれないけど、成海は気持ち良かったんだ。良かった。この恥ずかしがってる反応をもっと見たくなる。愛おしい。人にはじめて想った気持ち。
宏嵩はそっぽを向く成海の頬に触れた。恥ずかしそうに涙がまた溜まっていたが、なんと小さく、本当に小さく“気持ち良かった”とこたえた。その表情が愛おしくて、こころがザワザワする。そして、触れるくらいのキスをすると、成海も同じように返してきた。
宏嵩はゴソゴソとベッド下をまさぐった。そして、取り出したアレ。
「そ、それ…。」
「え、これで終わる?」
「ち、違う!それ、いつ買ったの?コンビニで買って…なかったよね?」
そう言った言葉に、宏嵩が照れたのを成海は感じた。そして、恥ずかしそうに言った。
「前から、ちゃんと準備してた。必要なもんだし…。」
前って、いつのこと?宏嵩、そういうこと考えてくれてたんだ…。
「わたしとシたいって、そんな目で見てたのかね、宏嵩くん!」
成海は冗談混じりに笑いながら言って、上体を起こして宏嵩と向き合った。そして、首に両手を回し、宏嵩へキスをした。
「ありがと。」
笑って、泣いて、怒って、とにかく成海の表情はくるくるよく変わる。本当に見てて飽きない。どんな表情も見てみたいけど、やっぱり、成海には笑っていてほしい。
好きなものへの“好き”がいつも全力で、人の気持ちにも上手に寄り添って、共有できる成海。
俺がどれだけ成海のことが好きなのかわかってる?きっと成海が思ってる以上に大きいよ。こんな俺でいい?
「宏嵩、わたし、宏嵩好きよ。」
落としたように笑って、成海は言った。
「ふふ、その顔。驚いたでしょ?ホント、わかりやすいね、宏嵩くんは。」
また笑った成海。
成海はいつだって、俺をわかりやすいと言う。成海には伝わったらいい、そう思ってたから?
「俺も…成海が好きだよ。」
「うん、知ってる。」
宏嵩は成海を強く抱き締めた。成海も顔をうずめながら、宏嵩を抱き締め返す。
体温が、行き交う。熱い。
「挿れるよ。」
「うん…。」
宏嵩の反り勃った自身に装着し、先程のように成海を見下ろすように跨る宏嵩。
ドクンドクンと脈打つ自身を、成海の秘所へと押し付ける。
(あ、あんなに、おっきい…なんて…。)
子どもの頃に見た宏嵩のものとは訳が違う。男になっていたものは、挿いるか不安になるほど。
「怖い…?」
自身が大きいかどうかは知らなかったが、成海の反応が自身の大きさは大きい方だとわからせた。過去に付き合ってた男達と自然と比べられてたのかと思うと、正直ムカつくが…こればかりはどうもならない。
「ひ、ひろ、たか…。」
故意かどうかわからなかったが、成海の秘所へ押し付けた宏嵩のものは、蜜で濡れて滑って入らない。それどころか、その滑らせる行為が妙にやらしくて、興奮する。そして、突起に固いものが当たるのだ。
(息が荒くなってるし…声も、出てきて、る。)
あ、あ、という成海の甘ったるい声。突起に自身が当たる度に出ている。気持ちイイのだろう。わざとじゃなかったが、滑って入らなかった自身のものが、成海を偶然にも興奮させているようだ。表情もとろんとしてきてるし、また瞳に涙が溜まってるように見える。
この行為、変に興奮する。
「ひ、ひろた、か!もう…あ、あぁっ!」
宏嵩はもっと滑らせていたかったが、もう我慢の限界だった。成海のナカに入れたい衝動にかられ、ズブズブとゆっくり、自身を挿れる。
ぴくぴくと成海の身体が反応し、成海は両手でシーツを掴んだ。
「はあぁっ…!」
「もうちょ、っと…。」
ゆっくりと、根元まで。さっきの前戯のおかげか、宏嵩のものをすんなりと受け入れた。根元までゆっくり、ゆっくりと挿れていく。
「ひろ…たかあ…。」
「なるみ…。」
根元まで挿いったもの。結合している箇所が熱くて焼けてしまいそう。絡みつくナニカ。
宏嵩は自身の両手を成海の両手に絡ませた。成海は大きく深呼吸をしながら、宏嵩を見つめた。
「動くよ。」
「あ、あぁっん!」
自然と動く自身の腰。最初はゆっくりと、動くたびに成海の秘所はきゅうっと締め付けてくる。
正直、すぐに果ててしまいそうだった。とにかく平常心を保っていなきゃ、すぐに…。
「あっ、あん、あ…。」
腰の動きとリンクして、成海の声が漏れる。成海は宏嵩の両手を必死に握り締めていた。
(…お腹…苦しい…。)
挿いってる。今、宏嵩が挿いってて、いっぱいになってるんだ。こんなに苦しかったっけ?セックスしたのがだいぶ前だから?
ううん、そうじゃない。宏嵩だからだ。宏嵩が大きいってこともあるけど…とにかく興奮するからだ。
目をうっすらと開けると、宏嵩の表情も随分苦しそうだった。汗がひとつ垂れ、成海の顔に落ちてきた。その表情を見たら、ナカが、より熱くなった気がした。
「なる、み…。」
宏嵩もうっすらと目を開けながら、キスを落とした。何回も、軽く触れるキス。
宏嵩も、気持ちイイ?そうだよね?だって、こんな…表情…。
「ひろたか…。」
宏嵩のキスに対して、成海は舌を絡ませて返した。宏嵩は一度ぴくりと止まったが、すぐに舌を絡ませて返してきた。ねっとりと舌が絡み、そのたびに糸を引く唾液。すぐに切れては、またすぐに絡む。
両手を離し、宏嵩は繋がったまま成海を強く抱き締めた。というより、しがみつくような。成海も宏嵩へしがみつくように腕を回し、宏嵩の身体に顔をうずめる。
「あ、あん、やあ…!」
「ーーーっん…。」
徐々に激しく動き出す宏嵩の腰。その動きに釣られ、成海の声もより漏れ出す。今更ながら、うずめた宏嵩の身体に口元を押し付けて、声を我慢していた。だが、努力虚しくどうやっても漏れ出してしまう。
実は宏嵩も声を我慢していた。それくらい、成海のナカが気持ち良くて…。
(や、やば…い…!)
果てそうになった宏嵩は、一度成海から離れようとした。少し止めて、もう一度動きを再開しようとした…が、成海の腕は離れようとしない。
「な、なる、み!ちょっ、と…!」
「だ、めえ!」
何がだめなのか。実は宏嵩のものがさっき刺激を与えられ、敏感になっている箇所を突いていた。そのおかげで、成海は限界だった。
「こ、のまま!離れない、で!」
恥ずかしいことを言ってる。でも、欲が抑えられない。このままでいてほしかった。
「なる、み!」
成海のナカがきゅうっとより締め付けてきた。宏嵩ももう我慢ができず、再度しがみつきながら腰を振り続ける。成海の奥に、奥に。
「なるみっ!」
「ああっ!!」
名前を呼んだと同時に宏嵩のものが成海の一番奥を突き上げた。同時に締め付ける成海のナカ。宏嵩はどくどくと果て、成海はビクビクと身体もナカも痙攣しているような感覚。
ふたりの荒い息遣いが部屋に響く。できるだけ、ゆっくり息継ぎをして、整える。
「成海…平気?」
ゆっくりと顔を上げ、成海の顔を覗いた。ボーッと力ない成海。瞳からいくつか涙が零れていたので、宏嵩は舌で目尻の涙を舐めとった。少量のしょっぱさが舌に広がる。
宏嵩はゆっくりと上体を起こし、成海のナカから自身を抜いた。その行為すら、成海には刺激的で、ん、と言う小さい声が漏れた。
(セックスして、絶頂っちゃうなんて…。)
成海は自分が信じられなかった。過去付き合った中で、一度だってこんなことはなかった。ただ、相手が満足してくれれば、わたしは肌を触れ合っているだけでも充分だったんだ。
なのに、まさかいとも簡単に指で、セックスで、絶頂かされてしまうなんて。
(気持ち…い。)
横目で宏嵩を見ると後処理が終わったのか、成海の身体を優しく起こした。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫。」
心配してくれる優しい宏嵩。そんな宏嵩の頬を指先で触れてみた。とても、熱い。
「熱くなっちゃったね。」
「うん。」
宏嵩は成海の指を取ると、ぎゅっと握り締めた。そのまま引き寄せる。
「成海。」
「宏嵩。」
成海が宏嵩を見上げると、宏嵩は深くキスをした。徐々に舌を絡ませて、またお互いの吐息も漏れる。
「成海、ごめん。」
「え…ひろ…?」
宏嵩は成海の言葉を唇で塞ぎ、そのまままたベッドへと押し倒した。そして、再度胸の膨らみに触れた。
[newpage]
「ひ、ひろたか!?」
「ごめん、もっかい。」
宏嵩はもう一度成海をめちゃくちゃにしたいと、思ってしまった。あまりにも可愛くて、嬉しくて、気持ち、良くて。
自身のものはすぐに反り勃ち、熱を帯びて固い。
そのものが、成海の下半身に当たり、成海もまた身体が熱くなった。
「あっ、んん!ひ、ろ、たかあ!」
宏嵩の舌は胸の膨らみを這っていた。交互に舐めては吸って、揉みしだきながらコリコリと固くなった頂点を舐め上げる。
そして、そのまま下半身へゆっくり舌が這い、触れた舐められたところ全てが熱く反応する。
「ーーーあ、っん!!」
秘所に触れた宏嵩の指。先程よりも溢れ出ている蜜を中指がすくい取り、そのまま穴へ差し込んだ。すぐに薬指も挿れてみたが、すんなりと受け入れられ、グチョグチョといやらしい粘着音がより響いた。
「あぁっん!や、あっ、はぁ、ん!」
宏嵩は先程のように2本の指を出し入れしながら、突起を舌で舐めた。びくりと腰が大きく浮き、甘い声も漏れた。
「成海…気持ちイ?」
「ああっ!んっはあん!」
瞳をぎゅっと閉じ、シーツに両手でしがみついている。身体は反応し、舌の動きに合わせて腰も浮く。
宏嵩の2本の指は、成海の敏感な箇所をつつき始める。
「や、やだあ!だめ、絶頂っ…!」
「絶頂って、成海。」
出し入れする指の速度を速め、成海を絶頂へと誘う。喘ぐ甘い声が耳に響き、宏嵩のものをより興奮させていく。
「ああ、は、あんっ!!」
宏嵩の指がソコを刺激し、ナカがきゅうっと締め付く。成海はまたびくりと大きく反応し、腰を浮かせて絶頂った。
「はあ、はあ…。」
頭が空っぽになったみたい。この短時間で何度絶頂かされてしまった?
成海がまだ動けないでいると、宏嵩は立ち上がり寝室を出て行った。そして、すぐに戻ってきた宏嵩の手にはペットボトルが。
「飲む?」
冷えたミネラルウォーターのペットボトルを、成海の頬に押し当て聞いた。
そういえば、喉がカラカラだ。成海がこくりと頷くと、宏嵩は一口水を口に含んだ、そして、
成海へ口移した。冷たい水が喉を通り、とても気持ちが良かった。宏嵩もゴクリと水を飲む。
「もうちょっと、付き合って。」
そう言いながら、宏嵩は自身のものに装着した。
こんなに我慢がきかなくなるなんて…思ってもみなかった。もっと乱れた成海が見たい。甘い声を必死で我慢していたり、その割には身体は素直に反応していて、とろりととろけきっている。
可愛くて、可愛くて。
宏嵩は力が入らない成海を引っ張りながら起こし座らせる。
「成海。」
成海の両肩に宏嵩の両手が置かれると、そのままキスをした。舌を絡ませ、離しては唾液が名残惜しそうに糸を引く。
こんなに求められると思わなかった。何度キスをして、何度舌を絡ませてる?普段の宏嵩とは違う、少し強引で欲に溺れてるように見えた。
…欲なら普段からも溺れてるかな、宏嵩だけじゃなくて、わたしも。
自分の好きなことに没頭していても、宏嵩は咎めるわけでもなく、呆れるわけでもなく、ただそばにいて、ただ受け入れてくれてる。自分の趣味だ、他人になんと言われようともやめるつもりはないが、バレてしまうのだけは生きてきた人生極力避けてきたこと。それなのに、宏嵩は再会してきたときも当たり前に振ってきた話題だったし、というか少しもブレないゲーオタ廃人だった。そして、わたしのことも少しも変わらずに受け入れたんだ。
宏嵩が宏嵩で、とても安心したの。
宏嵩は成海を少し持ち上げ、座る宏嵩の両足へと乗せた。成海は一瞬何をするのかわからなくなったが、すぐに理解した。つまり、座位。そして、びしょびしょに濡れた成海のナカに、ズブズブとゆっくりおさまった。
「はああ、ん!」
「ーーーっん!」
ナカがきゅうっと宏嵩のものを締め付けた。そのせいで、宏嵩まで声が漏れる。やはり、成海のナカは気持ちがいい。
「ひ、ろ…あ、ああっ!」
成海の両手は自然と宏嵩の首元へ絡まった。上体がズレないように、成海は身体に力を入れて上体を保つ。宏嵩の両手も成海の腰へ回した。
「なるみ、舌…。」
目を開けたまま、見つめ合うまま宏嵩と成海は舌を絡ませた。粘着音と吐息が混ざり響く。ぴちゃぴちゃ、ヌチャヌチャ…複数のいやらしい粘着音がふたりを興奮させた。
「あ、あっ!はあ、ん!あ、ん!」
「な、る、み…。」
ふたりの腰が上下に動くたびに、成海の甘い声も漏れて、ナカもよりねっとりと絡まっていく。夢中で腰を振り、目が合うたびにキスをして舌を絡める。
「すき、だ…!」
宏嵩は小さく絞り出した。その言葉に、成海は目を丸くして驚いた。なんて、か細い、声。
「わたしも、わたしも好き、宏嵩ぁ…。」
「成海…!」
宏嵩の目が熱くなる。目の前がなんだか霞む。これは、これは…。
好きだと思った。成海のことが、誰よりも。関係を壊してしまうことになる、それでも自分のことを“彼氏”というまた別の、特別の関係にしてもいいというなら。
幼なじみとしていてもよかった。でも、それだと俺の、成海にはできない。独占したい。誰かのせいで成海が泣くんじゃなくて、どうせ泣くなら俺が理由になってよ。それを許されるような関係を、望んでしまったんだ。
どこで間違えちゃうんだろう。
成海がいつかそう言って、涙を流してたあの日。
触れたかった。涙を拭き取ってあげたかった。でも、それは許されなかった。してはいけなかった。
俺なら泣かせない。俺なら後悔させない。これは自分の戒めのようなものだ。俺がどれだけ成海を好きだということを、俺が後悔しないための。
俺と同じ想いになったらいいのに。
触れたかった。笑わせたかった。それは、これからも、ずっととなりで…。
成海は宏嵩の頬をひとつ、涙が零れたことに気がついた。汗と混じっていたけれど、瞳から溢れたんだ。荒い息遣いをぐっと堪えながら、右手を伸ばし、涙を拭った。
「宏嵩ぁ…。」
甘く囁いた俺の名前。特別じゃないのに、特別に聞こえる。これは、成海だからだ。
「成海…。」
深く、キスをした。ぎゅっとお互いを抱き締めながら、深く。触れてる素肌同士が熱い。
そして、そのまま腰の動きを速めた。この熱を感じながら、果てたい。
「あ、あっ!は、あっ!っん、ーーーっぁあ!!」
「なる、み!で、る…!」
同時に宏嵩は腰を高く突き上げた。びくりと大きく腰が浮いた成海。ふたりでナカの一番奥に、果てた。
ふわふわとまるで浮いてるかのような、変な感覚。荒い息遣いを懸命に整えた。
ふたりぎゅっと抱き締め合い、感覚に酔っていた。成海は顔を宏嵩の胸にうずめる。どくどくと心臓の音は速い。それは、成海も同じ。このままこの音を聞いていたい。
全身の力が抜けて、急に、眠気が…。
「成海。」
宏嵩に呼ばれ、顔を上げた。
成海の目は虚ろで、ボーッと力なく俺を見つめた。続けざまに激しく求めてしまったんだ。成海には悪いことをしたかも。欲に忠実になりすぎたかな、ごめん。
申し訳ない気持ちを含めて、宏嵩は軽く触れるキスをして、抱き締め直す。
「宏嵩。」
成海が少し笑ったのがわかった。
「ごめん、眠い…。」
成海はぐりぐりと顔を胸に押し付けて、またうずめた。そして、すぐに小さな寝息が聞こえてきた。身体の限界だったか、成海は宏嵩に身体を預けて眠りについていた。
“ごめん”、と言われ、まるで許されたような気持ちになった。だって、こんなに安心しきって眠っている。
たかが、セックスひとつでこんな想いをするとは思わなかった。素肌同士が触れ合って、熱を感じ、速くなった鼓動は同じ。いつだってそばにいたけど、今日はこんなに近い。
だから、溢れてしまった涙。ダサい。堪えていたのに、ひとつ流れてしまった。汗と混じって流れたけれど、成海には気づかれてないかな。
ゆっくり自身を引き抜いて、成海を寝かした。起きる様子もなくて、ぐっすり。
無防備な寝顔。ゲーム合宿と称して泊まったときとは違う、俺しか知らない成海。
とても可愛いと思った。
「好きだよ、成海。」
俺の思いの丈を思い知ってほしい。
宏嵩は成海の唇へ、触れるだけのキスを落とした。
[newpage]
成海が目を開けてはじめに思ったのは、身体中が痛いこと。昨夜はあんなにしたんだ、日頃の運動不足を後悔した。
宏嵩の胸板が目の前にある。眠気に負け、あのまま寝てしまったんだった。
成海の枕は宏嵩の左腕だった。右腕は成海の腰へと回されており、がっちりと包まれている。ふたりを覆っている掛け布団も相まって、暖かい。
(…身体、筋肉痛かも…。)
見上げると宏嵩の顔が近くて、気づかなかった睫毛の長さ。宏嵩は起きそうにない。
(宏嵩って…。)
昨夜の行為で感じた、宏嵩の意外な一面。たぶん、宏嵩自身も気づいていないだろう。
(こいつ、天然無自覚S…絶対。)
恥ずかしい言葉を、自然と口にして、こちらの気分を煽ってきた。わたしが恥ずかしがっていることも充分わかっていながら、それでも言葉に出してきた。そして、欲に忠実なのかも。だってあんなに激しく求めてきた。宏嵩はおそらく無自覚。
(タチが悪いな〜。)
ずるい。あんなに興奮してしまった自分も悔しい。普段は特別な言葉を言わないくせに、ああいう場面になると平気で口に出せる男だったなんて…。
思い出したらだめだ。妙な気分になってしまいそう。
「なるみ…。」
宏嵩は名前を呼びながら、成海の腰に回していた右手で目を擦った。成海が顔を上げると、宏嵩はまだ眠たいようで我慢できなかった欠伸を掌で隠していた。
「お、おはよ、宏嵩。」
「ん、…はよ。」
再度右手が腰に巻かれ、グイッと引き寄せられた。宏嵩の両腕に包まれる。
「痛いとこ、ない?」
成海の耳元で小さく囁く。これもわざと?吐息混じりな言葉にゾワゾワしてしまう。
無理をさせてしまっただろう。欲のまま成海を求めたから。でも、欲しくなってしまった。からだも、こころも。
「…全身、痛い。」
「…奇遇〜、俺も。変なとこ痛い。」
耳元を離れた宏嵩の言葉に、成海はぷぷっとつい吹き出してしまった。冗談を交えながらこたえる宏嵩は、いつも通りの宏嵩だ。
「お互い社会人、運動不足だもんね。」
「まったくですな。」
成海が顔を上げると、宏嵩も落としたように笑っていた。控えめなこの笑顔。優しくて、好き。
「宏嵩。」
「ん?」
「寝ちゃって…ごめんね、…怒ってる?」
体力の限界がとっくに切れていたし、あの心地良い心音を聞いていたせいで自然と眠気に襲われた。もう少し、余韻に浸ればよかった。
「いや、仕方ねーよ。あんなにしたしね。」
宏嵩は成海へ軽くキスをした。
「でも、もっとしたかったな。」
「え!宏嵩、絶倫男なの!?」
「ちげーよ。」
もう一度、軽く触れるキス。
「絶倫かどうかはわかんないけど、もっとしたいのはホント。」
宏嵩は抱き締めていた成海を少し引き離すと、そのまま成海に覆いかぶさった。
「ちょ、っと宏嵩…!」
成海は宏嵩の反り勃ったものをまじまじと見てしまった。昨夜は暗かったから、ちゃんと見えなかったけど…今はとても明るいから。
「朝から…元気だね。」
「そりゃあ、朝だし。成海のそんな格好、見ちゃったらなるでしょ。」
覆いかぶさった宏嵩の視線は、成海の素肌へ。すぐに視線を成海の顔へ戻すと、キス。そして、啄むようなキスから、舌をねじ込み、強引に舌を絡ませた。
「…ふ、ぅ…はあ…。」
起きてすぐになんて…!と思った成海も、結局そのキスでスイッチが入ってしまった。さっき昨夜のことを思い出してしまったこともあって、息遣いは荒くなり身体はすぐに熱くなる。
「えっち…。」
「いや?」
「…いや、じゃない。」
速くなった呼吸を整え、再度ねっとりと絡ませたキス。何度も唾液が糸を引き、途切れ、また繋がる。
昨夜よりも少し冗談を交えながら、何度もキスを交わし合う。お互いがお互いを欲しいと想いが重なった。こんなに甘い朝ははじめてだった。
「成海。」
「宏嵩。」
こんなにも名前を呼び合ったことがあっただろうか。特別なこと、なんでもないことが特別になっていく。お互いの知らなかった表情、声、恥ずかしい言葉と素直に求めた言葉もあった。
知らなかったことを知っていくのが、なんて幸せだと、感じた。